果実は、植物体の成熟充実によって生まれます。「桃栗三年、柿八年」なども植物体の成熟を言ったものでしょう。
結実までには、花芽分化~着蕾~開花~受精といった経過があります。結実には当然ですが、受精が行われなくてはならないのです。
一口に言えば、受精によって果実が生まれ、その果実は種子の作用で肥大する仕組みです。
受精は花粉を昆虫・風・水などで運ばれたり、トマトのようにメシベが伸びるときに花粉に触れることにより受精するものなど、種類によって異なります。
更に注意しなければならないのは、多くの果実では一つの花での受精が困難で、違う品種からの花粉でないと受精しない性質があることです。
そのために果樹栽培では、結実を目的とする品種と「授粉樹」を、セットで植えることが理想とされるのです。
自然に恵まれている所では、放任しても受精~結実するものです。
よく一株だけ植えてある果樹がよく結実する、という話を聞きますが、これは近くに「授粉樹」があり、そこから昆虫が花粉を運んでいるのでしょう。その木から1キロメートル以内に「授粉樹」があれば、結実する可能性があると言われる程ですから。
しかし自然が乏しく昆虫などのいない環境では、人手によって、それを補わなければなりません。それが「授粉」です。
開花して花粉が見えるようになった花を摘み取り、結実させたい花に触れてやればよいのですが、多数の花がある時には、写真のように、乾燥した柔らかい筆などに花粉を着けておき、目的のメシベ(柱頭)に触れてやるのです。
この時、目的の花粉だけでなく、他の品種や植物の花粉を混ぜておくと、受精率が高まるという説があります。主役の花粉にすれば、ライバルが現れることでハッスルするというのです。
実際、多数の授粉作業をする場合には、柔らかい羽根などで作ったハタキのようなものを用い、手当たり次第に花に触れて歩く、という人もいる程です。
乱暴なようですが、蝶や蜂が花から花へと飛んでいる様子から見ても、納得できる話です。
それに、トマトなどでは支柱を叩いてやることで花が動き、受精が容易になり、結実がよくなるとも言われます。
もちろん、品種改良など特定の花粉で受精させたい場合には、花から花粉(葯)を取り除いておく必要があります。葯から花粉が現れるのは、植物によって異なりますので、花が開花する前に葯を取り除き、袋を掛けて目的外の受精を防ぐことが必要です。
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