鉢植えで育てている甘夏の実生をしてみたくなりました。甘夏は夏ミカンから生まれた品種です。
写真の株は、ユズを台木にして緑枝接ぎをしたものです。そして、下方の枝にハッサクを緑枝接ぎしてあります。
木にしてみれば迷惑かもしれませんが、家庭果樹栽培ではついつい欲が深くなりこんな状態になってしまいました。
軽い防寒をして越冬したこの株には、4個の実が着いており、暖かくなって果汁も戻ってきたでしょうから賞味し、採種することにしました。
現在栽培されている果樹の品種は雑種ですから、多くの場合実生しても親株とはまるで違う形質の株が誕生します。ところが、柑橘類には特異な性質があり、実生しても親株と全く同じ形質の株を得られることがあるのです。
それというのも、柑橘類には珠心胚(しゅしんはい)という無性的な胚形成能力があるからです。珠心胚は親株そのものの組織である珠心から発生しますから、実生すると当然のことですが、遺伝的にも親株と同じ形質を持った株が誕生するわけです。それは栄養繁殖であり、挿木や取木、あるいは接木と同じ繁殖となります。
それに、受精によって生ずるものもありますから、一つの種子の中に受精して生じた胚とそうでないものが潜んでいるのです。こうした種子のことを多胚種子といい、品種としては多胚品種と呼ばれます。
こうした種子を播きますと、一つの種子から複数の芽が生じます。そして、珠心胚からの芽の勢いが強く、受精して生じた胚からのものを圧倒します。ですから、発芽してから元気に育っているものを選んで育てますと、親株と同じ形質の苗を得られるわけです。
こうした性質が非常にはっきりしているものとそうでないものがあり、珠心胚を確実に生ずるものとしては温州ミカン・グレープフルーツ・スイートオレンジ・ダイダイ・夏ミカン・ユズ・ライム・レモンなどがあります。それに対して、多くの植物と同じように、受精して生ずる有性胚だけの単胚種子を持つものとしては、伊予カン・紀州ミカン・シトロン・ハッサク・ブンタンなどがあります。
<さあ、やってみよー!>
1)種子の水洗
種子は丁寧に水洗いして、発芽の妨げになるヌメリなどを取り除きます。違う表現では、鳥のお腹を通過した状態にしておくことでしょうか。
2)用土
赤玉土を用います。排水・保水性が高く、管理が楽なだけでなく、新しいものを用いますと、雑菌による被害の心配が少ないからです。
3)種子間隔
種子と種子の間隔は2cmくらいを目安に播付けます。種子の厚みを目安に覆土します。
4)灌水(腰水)
鉢ごと水に浸して底穴から吸水させます。こうすると土や種を動かさずに灌水することができます。ラベルも忘れずに差しておきましょう。
5)発芽
地温が上昇する(15℃以上)5月以降でしょう。
なお、モミジやケヤキなどの乾燥した種子と異なり、水分の多い果肉に包まれている柑橘類の種子は、乾燥させると発芽力を失うので採種してすぐ播く、採り播きが理想的です。
多胚種子と単胚種子…植物の不思議を改めて感じました。発芽の日が楽しみです♪関西地方で人気のミカンの収穫にオススメの鋏を紹介します
採収鋏
丸い刃先は、デリケ―トな果物に傷がつきにくい設計です。また、刃先が短いので細かな作業を難無くこなします。
400 採収鋏大直
410 採収鋏大曲
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