庭の一隅から、この鉢をみつけました。
長い間放任していたので樹形は乱れています。
残念なことにラベルも失っており、来夏に結実をみないと種類もよく分かりません。
本音を言いますと、ビックリグミであれば庭に植えてもよいと思いますが、
小さな果実の種類であれば鉢で育てたいと思います。
幸い、これまで鉢で育っているので、根はしっかりしており、いつでも庭に植えることかできます。
そこで問題となるのは、幹づくりです。
ご覧のように、今一番旺盛な生育をしているのは、
株元から伸び上がっている徒長枝です。
もしも庭に植えるのであれば、これを幹とした方が後々の生育は旺盛になることでしょう。
一方、鉢栽培、それも“盆栽仕立て”にするとなれば、
直線的なものより曲線的なものの方が立体的に仕上がるので、
こちらの方を幹として樹形を作りたいところです。
違った見方をしますと、徒長枝は3年くらいでできあがっていますが、
もう一つの幹候補は10年以上かかって形が作られています。
写真のように幹が曲がっている部分は、芽摘み(剪定)によって直線的な伸びが止められ、脇芽を伸ばして作られた形です。
芽摘みされた部分から下と上を比較しますと、曲がった(剪定された)部分の上下では太さが違います。
それは年輪を感じさせる姿です。
そうした視点で徒長枝を見ますと、形が単純なだけでなく、年輪(太さ)が感じられません。
こうなると、10年以上かけてできあがっている幹が愛おしくなります。
この際、徒長枝を割愛して、
年輪を感じさせる方を幹として育てることにします。
<さあ、やってみよー!>
※今回の“果樹盆栽”については、
西先生監修のもと、ARS社員である赤シャツが剪定作業を行いました。
「どの枝を残すのか」、「どの位置で切るのか」、
頭を抱え、悩みながらの剪定作業となりました。
作業の様子をどうぞご覧ください。
まずは、株元から出ている徒長枝を外しました。
次に、奥に伸びている徒長枝も外しました。
徒長枝は、ただまっすぐに伸びただけで、枝の太さが変わらず、
盆栽としては“おもしろくない枝”となります。
中ほどの立ち枝も外します。
立ち枝は美しくありません。
続いて、左側の枝も剪定します。
剪定するときのポイントですが、外側に向いている芽の上で切ります。
こうすることで将来的に枝の曲線・広がりが生まれるからです。
だんだんと、すっきりしてきました。
眺めてみると、伸びすぎている枝がよく見えます。
写真中央の枝が、ずいぶんと長く伸びだしているようですので、
こちらも剪定します。
初めは恐々だった剪定作業も、
なんとなく、切るべき場所がわかってきたような気がします。
西先生にアドバイスをいただきながら、
さらに剪定作業を続けていきます。
その他の枝も同様に伸びすぎている枝を剪定します。
前述のように、ここでも剪定箇所のポイントは“外に向いている芽の上”です。
だいぶすっきりしてきたところで、
不要な小枝もたくさんあることが見えてきました。
それらを外していきます。
左右の長すぎる枝を剪定すると、
完成が近いような印象です。
と思いましたが、よく見るとまだまだ不要な小枝があります。
それらを再び外していきます。
赤シャツ 「さて、どうですか!西先生!完成です!」
西先生 「ちょいと、右側の枝が長すぎないかな?」
赤シャツ 「なるほど。もう少し切ってみます。」
赤シャツ 「これでどうでしょう。完成ですね!」
西先生 「いや。もうちょっと左側も詰めた方がいいかな。」
赤シャツ 「そうですね・・・。確かに・・・。」
というようなやりとりが最後にありつつ、
ようやく完成した形がこちらです。
まずは幹を決め、それから大枝(主枝)~小枝までの剪定をします。
幹~主枝(大技)~中枝~小枝(枝先)にかけて整える際には、
ちょうど水源地から家庭の蛇口までの水道管の配置と同じように
考えるとわかりやすいでしょう。
水量(樹液)によって管(枝)の太さを加減するというものです。
それは、その枝の年輪でもあります。
樹形が整ったら、重要なのが鉢の選択です。
盆栽としての景色を感じさせる鉢であり、
なおかつ果樹盆栽にするために、
果実を養う根を育てられるような鉢が必要となります。
ですので、鉢の選択は非常に重要になるのですが、
こちらについては、次回以降のレポートでお伝えします。
取材後記
今回のレポートは新しい分野“果樹盆栽”への取り組みでした。
西先生はおっしゃられます。
「盆栽とはその一鉢で景色を創りだすもの。
鉢物とは植物の生理・生態に沿って、植物美を楽しむもの。」
つまり、鉢物は植物中心のものですが、
盆栽は人間の想いが中心となりデザインを創り出すもの、
ということです。
「盆栽で残す枝は好み」
とは先生のお言葉ですが、
『剪定によって、その鉢の未来の姿を想像できるかどうか』
ということが盆栽に取組むうえで、非常に重要な意味を持つと感じました。
これからも、“果樹盆栽”をテーマにしたレポートを更新予定です。
西先生のアドバイスを受けながら、
アルス社員として、しっかりと取組んで行きたいと思います。
皆さま、どうぞお楽しみに。
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今回の作業では、弊社の新製品「VSシリーズ」の剪定鋏を使用しました。
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