果樹を鉢で育て、樹形は盆栽のように美しい姿に仕立てる、
「果樹盆栽」を夢見ているのですが、市販の苗木では良いものが見つかりません。下枝の位置が高くなっていて、これを使用するととても大きな鉢が必要になります。
ちょうどミカン類の接木の季節ですから、自分で苗木を作ることにしました。
接木には色々な方法がありますが、今回は「根元接ぎ」を行うことにしました。
この方法だと、特に大切な「一の枝」を低い位置から出させることができますし、コンパクトな樹形に仕立てることができます(当然小鉢で育てられます)。
さあやってみましょう!
接ぎ穂と台木の形成層を密着させて癒合させるという、接木の基本に沿っているのですが、特に台木の根の状態と、接ぐ位置がポイントとなります。
さっそく、とりかかりましょう。
接ぎ穂と台木の選択
お見合いのようなもので「相性」に注意します。
まず両者の形成層が密着しやすいことと、
接木する部分の太さがおなじようなものを選びたいところ。
それに生長が旺盛な若いもの、特に接ぎ穂は新梢を選びます。
▼台木はユズの実生苗、接ぎ穂はハッサク
根の調整
樹形のバランスは、根の状態が決め手となります。
「八方根張り」という言葉のように四方八方に根が伸びているに越したことはありません。せめて四方に伸びているようにしたいものです。
そうしたことから、写真のように一方にしか根の出ていない場合(片根張り)は間引いておきます。
また、鉢は出来るだけ小さな(浅い)もので育てたいのですが、
そのためには根の層を薄くしておくことが必要です。
特に直根の切り戻しはその中心作業です。直根の切り戻しは、株の生長を抑制することにつながり、枝の徒長予防に深く関係します。小枝の繁りが欲しい樹形づくりの場合には、邪魔者になるのです。
▼直根の切り戻し
※切り戻したところは、トップジンMなどの切り口癒合剤を塗布しておきましょう。
▼台木
枝葉の調整
水分のバランスだけ考えても、根をこれだけ間引いたのですから、
枝葉もそれに合わせて間引く必要があります。
それに今回は根からの着水が接ぎ穂に優先的に流れて欲しいのです。
そこで台木の葉を特に間引くことにします。
接ぎ穂の調整
台木の接木部と似通った太さのよく充実した新梢の2節を残し、2節目の下の部分を削って、台木に挿入することにします。
葉の調整
このような大きな葉が着いていると、活着する前に萎れてしまいます。
そこで葉柄の部分近くまで切り戻しておきます。
接木部作り
よく切れる刃物を使って、接ぎ穂の株を楔(クサビ)状に削ります。
これを台木に接合させるのですが、台木に切り込みを入れるまでの間に乾燥するといけないので、口の中に削った部分を入れて湿度を保ってやります。
ただし唾(つば)をつけないように注意します。
接ぐ
台木の切り込み
根張りの1cmくらい(これはご自分の判断で)のところに、
接ぎ穂の削った部分がそっくり納まる長さに切り込みを入れます。
単純な作業ですが、この際の切り口の状態が接木の成否に直結します。
できるだけ鋭利な刃物を使ってください。
このミカンにすれば大手術ですから。
接ぎ穂の挿入
先に調整した接ぎ穂を挿入するのですが、このとき台木の切り口が少し開くように曲げてやりますと、業がスムーズですし両者の切り口が損なわれにくくなるでしょう。
接木部の固定と保護
接木してから1ヶ月くらいが最も大切なときで、この間に接木部が動いたり、水が入り込むことは禁物です。そこで「接木テープ」などでしっかり保護してやります。しかし今回は、市販の「園芸クリップ」が手に入りましたので、
これで接木部を挟んで作業終了です。
「園芸クリップ」は植え付けた際に、株の安定にも役立ちます。
植え付け時は、クリップが埋まらないようにしましょう。
最後に接木部に水が入らないことと、
接木部・株の乾燥防止のために透明なポリ袋で包んでおきます。
密封しているので、用土の乾燥はなく、
1ヶ月くらいはこのままで軒下などで過ごしましょう。
もし、用土が乾いているなら灌水します。
接木が成功していれば、接ぎ穂はみずみずしい緑色をしています。
接木部(癒合)の状態を見て、ポリ袋から出してやりましょう。
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