写真のモモは、この位置に地植えされ、かなり大型の樹形になっていたのですが、容器栽培とし小型化したものです。
新しい種類の果樹が次々と導入されたため、場所を譲らなければならなかったのです。ところが、再びこの場所から移動しなければならなくなりました。
移動するには、さらに小型化しておかなければなりません。
この時期に強い剪定をするのは危険ですし、開花結実にも大きく影響します。
そうしたことを踏まえて、この時期に行えるできるだけ安全な樹形の小型化を試みることにします。
● ● ● さあ、やってみよー! ● ● ● ● ● ●
観察
最初の写真を見ていただくとわかるように、右側の枝の勢いが強くなっています。これは、右の枝に続く根のグループが地面に入り込んだことによる影響と思われます。
▼右側の枝群
現在も伸び続けている
▼左側の枝群
伸長が停止している伸長が停止している枝先
根の処理
まず、根の切り戻しを行います。
まだあまり太い根は出ていないと思われたのですが、
スコップで容器の底の辺りを探ってみると、
かなり太い根が伸び出していました。
スコップで周りの土を掘り、
のこぎりを使って根を切り戻しました。
▼のこぎりで根を切り戻しているところ
▼根の切り口
かなり太い根が伸び出していました。
これらは、右側の枝群に続いていた根群と考えられます。
▼根を切り戻したあと
ビニールを地面に敷き、
根が地面に入りこまないようにしました。
新梢の切り戻し
根をかなり切り取り、養水分の吸収能力が低下していますので、
新梢もそれに合わせて切り戻してやります。
特に、徒長枝は活動が旺盛なので、
萎れの原因になりやすいためです。
▼太枝切り鋏ロッパーで徒長枝を切る
▼鋸で徒長枝を切る
▼徒長枝切除後の姿
特に右側の伸びをきつめに制限しました。
環状剥皮
現在、根と新梢の切り戻しによってバランスが保たれています。
問題はそこからさらに枝を切り込み、樹形を小型化しなければならないことです。方法としては、かなり乱暴ですが、一気に根と枝を切り込んで小型化することは可能です。しかしそれではこの株の生育バランスが乱れてしまい、落ち着いて開花結実するまでにかなりの時間が必要となります。
そこで株へのショックを少なくするために、切除を予定している枝の切り離し部分に環状剥皮をしておきます。
こうすることによって、この株の環状剥皮された部分から先の部分は
生育に関係のない状態となります。
すると、冬に環状剥皮した部分から枝を切除してもあまりショックを受けなくて済むのです。
なお、環状剥皮する幅が狭いと、モモは生育が旺盛なので、秋までに傷口が塞がって元通りの枝になってしまいます。また、形成層という薄い膜をきれいに取り除いておかないと、短期間で切り口が癒合してしまいます。
▼刃の長いはさみを使い、枝の太さと同等の幅でぐるり切り込みを入れる
上側に切り込みを入れいているところ
下側に切り込みを入れいているところ
▼先のとがったはさみを使い、タテに切り込みを入れる
▼樹皮・形成層を剥ぎ取る
▼環状剥皮完了
リンキング
リンキングとは、環状剥皮をしたい部分に
20番線くらいの針金を
しっかりと巻きつけておく処理のことです。
これから秋にかけて枝はどんどん太りますが、
針金をまいた部分は太ることができず、
ここがネックとなって養水分の流れが妨げられ、
環状剥皮をしたのと同じ効果が期待できます。
▼リンキングした部分
▼左側:リンキング/右側:環状剥皮
環状剥皮やリンキングされた枝は、処理部分に養分が集まり太くなります。
こうした状態になると取木や挿木をした場合に、発根率が非常に高くなります。
おまけ
以前に矮性モモの盆栽仕立てをレポートしましたが、そちらが見事に結実しました。小さな鉢に植わった木に実がなっているのはなんともかわいらしいです。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
『 モモの生育時の樹形縮小法 』に適した刃物
植木鋏ロングタイプ
最新ハイテク技術で軽量化を実現しました。
刃先の長いU-600Lは、堺刃物の伝統を汲む鍛造刃を採用。
アルス独自の熱処理を施した強力な刃先は、いつまでも精度が高く、
バラつきの少ない切れ味を保ちます。西先生も愛用のはさみです
植木鋏ロングタイプ U-600L
- « ブルーベリー鉢の手入れ
- カキの樹形作り »