イチジクの整枝法では多くの場合、
開心自然形とか盃状形仕立てがよく見られます。
栽培面や収量面からも非常に合理的なものです。
ところが、わが家の場合、アライグマの襲撃(?)を
念頭に置いて樹形を整える必要があります。
そこで“平面樹形仕立て(アライグマ仕立て)”
なるものを試みることにしました。
ポイントは「アライグマの被害をいかに簡単に防止するか」にあります。
これまでブドウで行い成功している、
「成熟した果実を金網で包み込むこと」に好都合な樹形にしようと思います。
以上はこちらの都合ですが、イチジクご本人の事情が優先します。
肝心なことは、結果習性でしょう。
若いイチジクを放任しておきますと、
春に伸び出した枝の基部から蕾が着いて、
秋になると基部から順に収穫ができます。
ところが、枝の先端部の蕾は気温の低下によって
成熟しないまま越冬することになります。
もしも、この蕾が凍傷にならなければ、
春から生長を再開し、6~7月に成熟します。
いわゆる「夏イチジク」で、園芸学上「第一期果」と呼ばれているものです。
一方、春に伸び出した枝に着いた蕾は、
夏を越して成熟するので「秋イチジク」=「第二期果」となります。
さらに、温暖な環境や、イチジクの品種によっては、
果実が越冬して第一期果より先に成熟するものがあり、
これは「第三期果」と呼ばれます。
今回は鉢植えのイチジクの整枝です。
まずは、芽の観察をしてみましょう。
写真のようにいくつかの枝先に蕾が越冬しています。
ここで決断が必要です。
将来のことを考えて、基本的な樹形を作ることを優先するか、
今見た蕾に期待(収穫)するかということです。
欲深いようですが、ニ兎を追うことにしました。
というのは、主枝となる枝に関してはしっかりと剪定し、
この夏に収穫させた枝は間引くというものです。
<さあ、やってみよー! その1:仕立て>
作業前のイチジク
取木部をはずす
まずは、取木していた部分をはずします。
取木部の処理は最後に紹介します。
※取木をしたのは2010年9月です。
「イチジクの取木」
主枝となる枝の剪定
写真のように、3本の主枝候補は切り戻し、
幹の下から出ている不要な枝は切り取り、
蕾を着けていて間引く枝はそのままにすることにします。
[1]主枝の剪定1
最後に、蕾を着けて残した枝に支柱を添え、上に向けます。
蕾が着いていることで枝は弱りやすくなります。
横を向いていることでも弱りやすくなります。
上に向いた枝には根からの栄養が優先して届きますので、
元気にしたい枝は上に向けることがポイントです。
また、枝は平面的に整えていますので、
アライグマ対策(金網で包み込む)にも好都合です。
なお、植物は多くの場合、
花芽よりも葉芽を優先する性質があります。
栄養不良になると果実を落とす可能性が高くなり、
鉢栽培では、どうしても栄養不良になりかちです。
今回の目論見は欲深いものですから、
湛水はもちろん施肥についてもしっかりとしてやらなければなりません。
<さあ、やってみよー! その2:挿木>
切り取った枝は、捨てずに挿木をしておきます。
挿し穂の準備
剪定した枝は水につけておきます。
約20cmを目安として節の下1cmくらいのところで切断し、
挿し穂とします。
挿し床の準備
赤玉土を用意し、十分に水に浸して、
水切りしておきます。
ラベルの準備も忘れずに。
挿木をする
ピンセットで挿し穂を持ち、
鉢の外周に挿していきます。
灌水する
もう一度、灌水をして挿し穂を落ち着ければ作業完了です。
<さあ、やってみよー! その3:取木>
最後は、先にはずした取り木部の処理です。
水苔をはずす
水苔をはずすと、無事に根が出ていました!
根が出ているところより下の部分を切る
根が出ているところより下の部分を切ります。
植え付け
赤玉土を用意し、植え付けます。
ラベル表記も忘れずに。
イチジクは丈夫な植物ですが、
剪定・挿木は今月中に済ませたいところです。
『イチジクのアライグマ仕立て』に適した刃物
剪定した枝は挿木をすることで、
どんどん増やすことができるんですね。
しかも、イチジクは丈夫な植物ですので、
剪定された際にはぜひ、捨てずに挿木にしてください。
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