果樹の多くの種類は、自家親和性が低く、
違った品種が近くにないとうまく結実しません。
ウメの「白加賀」などはその極端な例で、
受粉樹がないと結実率が0%となってしまいます。
さらに問題なのは、受粉樹としての適不適がはっきりしていることです。
「稲積」「藤之梅」「織姫」などは70%以上の結実率を示しますが、
「養老」という品種では約50%になるという調査結果があります。
面白いのは、「花香実」「甲州最小」「藤之梅」といった品種で、
前二者は受粉樹として優れているだけでなく、自家結実率も50%以上、
「藤之梅」では70%以上の結実率をもつそうです。
もしも、一株しか植えられない場合は、こうした品種を選ぶことです。
ところで、今年もウメの開花は終わりを告げようとしていますが、
もしも開花したばかりの花や、蕾が見つかった場合には、
採集して花粉を保存しておきましょう。
というのも、スモモやアンズの受粉に利用できるためです。
調べてみますと、ウメ・アンズ・スモモは
いずれもサクラ(Prunus)属の植物で、学名では、
ウメ P.mume
スモモ P・salicina
アンズ P.armeniaca
となっており、近縁の植物であることが分かります。
花の世界での「洋らん」と「春蘭(シュンラン)」
のような関係(シンビジウム属)です。
もちろん、スモモにしてもアンズにしても
同じ種類の花粉での受精率が高いのですが、
スモモを例にとりますと、品種により違いますが、
ウメの花粉との交配親和率は1~50%という結果があるそうです。
興味深いのは、異種の植物の花粉と出会うことで、
結実率が高くなるということです。
ミツバチがミツを吸いに来ると受粉しやすくなるのですが、
草花の花粉も含め、いろいろな種類の花粉を体中に付けているからなのです。
ライバルに恋人を奪われないように、花粉も頑張るのでしょうか。
スモモの場合でよく知られているのは、
同じような時季に開花するモモの花粉の影響です。
有名な「ソルダム」という品種は、
自家結実率が低いので知られていますが、
モモの花粉で約10%の結実を見たという報告があります。
<さあ、やってみよー!>
花を摘む
開花直前の蕾か、開花直後の花を摘みます。
黄色い花粉がたっぷりついています。
右 開花して時間が経った葯(やく)
少し茶色く変色し、花粉はすでに飛散しています。
花粉がある葯(黄色)と花粉がない葯(茶色)が一目瞭然です。
温かいところ(20~25℃)に並べて花粉が出るのを待ちます。
先の葯(やく)のみを取って、集めます。
時間が経つと花粉の活力が低下するので、
早く受粉してやるに越したことはありません。
しかし、一週間以上も受粉作業が遅くなるような場合には、
乾燥剤を入れた容器に納め、冷蔵庫などで低温を保ってやると
発芽力を保つことができます。
スモモやモモでは、実験によれば、
-20℃で貯蔵した場合、10年間利用できたそうで、
今後の技術開発が期待されています。
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