矮性モモ[品種:ボナンザ・ピーチ]の鉢植えを入手しました。
矮化は節間が非常に短くなったことにあります。
それでいて、芽はたくさん残っているので、
枝を短く切り戻したい盆栽仕立てには誠に好都合です。
▼節間が非常に短く、芽がたくさん残っている様子
では、果樹盆栽仕立ての段取りです。
樹形の決定
樹形の中心となるのは幹ですが、
人体に例えますと背骨ということになりましょうか。
ですから、幹の状態から樹形が浮かび上がってきます。
そして、幹の形状でも決め手となるのが、
根張り(地面)から最初の枝(一の枝)までの幹の様子です。
この木の場合、接ぎ木の関係もあり、曲がっているので、
この調子を活かして幹を曲線的に仕立てるとすれば
「模様木」ということになります。
根張りの確認~植え付け
樹形において根張りは、建物の基礎の役割を果たしています。
この木の場合、曲線的な幹から四方に主枝を繁らせたいので、
根は四方八方に伸び出しているのが理想的です。
片一方にしか根がなければ斜幹仕立てとなります。
<さあ、やってみよー!~その1.根張りの確認~>
[1]鉢から出す
[2]根張りを確認する
根を傷つけないように、慎重に放射状に上部の土を落としていきます。
どんどん、土を落としていくと、
根の様子が明らかになってきました。
[3]太い根を切り戻す
1箇所、特別に太い根が出ていました。
1つの根の勢いばかりが強くなると、
よい基礎ができあがりませんので、
飛びぬけて太い値は切り戻します。
[4]放射状に伸びていない根を切る
放射状に伸びていない根も、
よい基礎づくりの邪魔になりますので切り取ります。
[5]根張り位置の確認
根張りは左右両側・同じ高さから出ていることが理想です。
もっとも上部の根は、根張りが片側だけだったので、
残念ながら切り落とすことにしました。
[6]鉢とのバランス
樹形ができあがったとき、
鉢は大地(生育空間)の役割を帯びますから、
その形態・色彩・材質の選択が大切となります。
しかし、まだ若木ですから
いまは栽培鉢を用います。
仕上げるときには中深の鉢に植え付けたいので、
そのときの鉢に根が無理なく納まるように鉢を選んでおくことが必要です。
[7]鉢に入れて確認する
この株の場合、
少し斜めに植えるのがバランスが良さそうだと考えました。
ところが、そのように植えた場合、
一部の根が鉢からはみ出してしまいます。
そこで、はみ出してしまう根は切り取ります。
切断面(傷口)が大きい場合は
トップジンMを塗布しておきます。
[8]植え付ける
用土は赤玉土の単用とします。
果樹は枝葉+果実で水分が必要なので、
灌水量が多くなります。
排水・保水に優れた赤玉土が最適ですし、
鑑賞面でも優れています。
それに、赤玉土に植え付けると
細根がよく発生することが知られています。
そうしたことから雑木盆栽作りに重宝されます。
根の状態は枝の茂りと密接な関係があり、
小枝がよく茂ってくれるからです。
▼植え付け前
▼植え付け後
[9]株が動かないように麻ひもで固定する
株が動くと発根しにくくなりますので、
動かないように麻ひもで株を固定します。
ラベルも忘れずに!
枝張り
下方の枝ほど太く長く、左右の枝の先端と芯を結ぶと、
不等辺三角形が描けるのが良いとされます。
果樹盆栽では、果実が枝と枝の間に成るので、
一般的な盆栽よりも枝と枝の間隔を広くとってやる必要があります。
枝の位置ですが、幹の曲がっている外側から出すようにします。
内側は無の空間「間」として樹形で重要な部分です。
<さあ、やってみよー!~その2.剪定~>
▼一の枝
▼ニの枝
▼三の枝
▼四の枝
さて、ここまで剪定したところで、
1本だけ長く残った枝があります。
この枝は、一の枝に重なるように伸びていますので、
本来であれば不要な枝なのですが、
今回はあえて残すことにしました。
花を着けて楽しみたいからです。
また、徒長を防ぐ意味もあります。
全ての枝を剪定してしまうと、
枝の勢いが強くなりすぎて、
枝が暴れる恐れがあります。
剪定とは木の若返りでもあるのですが、
若木になると実が着きませんので。
花も実も楽しみたい、
という想いから長めに残しておくことにしました。
▼花を楽しむために残した枝の剪定 ~今回の剪定位置~
▼花を楽しむために残した枝の剪定 ~参考:通常の剪定位置~
最後に、腰水につけて
たっぷり灌水してやります。
完成時の樹高の決定
趣味の世界ですから、
幹を高くして伸び伸びとした樹形にするか、
左右の枝を充実させて重厚な感じにするかは自由ですが、
一つの目安として、根張りから一の枝までの長さ(立ち上がり)の
三倍くらいを芯とすることがあります。
この木の場合、立ち上がりは約11cmですから、
完成時の樹高は約35cm弱となりそうです。
取材後記
2012年も果樹盆栽のレポートが主役となる予定ですので、
皆さまどうぞよろしくお願いします。
以下は西先生のお言葉です。
盆栽とはデザインである。
盆栽と彫刻との違いは「時間」。
彫刻は今日も明日も同じ姿だが、
盆栽は今年の姿と来年の姿は大きく異なる。
点・線・面・立体に「時間」をプラスしたデザインが盆栽である。
この言葉を聞いて
『盆栽って究極の芸術だなぁ』と感じました。
今後も果樹盆栽のレポートをどんどん配信予定です。
どうぞお楽しみに♪
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