鉢植えのスモモですが、
一昨年に徒長枝(主枝候補)を下に曲げたままにしておいたところ、
昨年の間に短い枝が何本か伸びて、よく見ると花芽を着けています。
そして下垂させた枝の先端部は枯死しています。
▼過去のレポート
スモモの傘仕立て 2011年3月
▼曲げたところから短い枝が何本も伸びている
▼しっかり曲げた方(右側)は徒長枝が少なく、曲げが弱い方(左側)は徒長枝が多い
▼下垂させた枝の先端部が枯死している
こうなると、当初考えていた樹形づくりは後回し、
『咲かせてみたい』、『成らせてみたい』という気持ちになります。
花芽を着けた短い枝(短果枝)を残しての整枝となりますと、
曲がっている大きな枝(結果母枝)をそのまま活かさなければなりません。
どうやらこの木は、枝垂れた樹形(傘仕立て)となりそうです。
考えてみれば、それで別に支障があるわけではありません。
<さあ、やってみよー!~整枝の手順~>
■枯れ枝・小枝の整理
まずは枯死した枝を整理します。
残しておくと樹形がすっきりしないだけでなく、
小枝の整理の際に生きている枝と錯覚を起こして、
大事な枝を外してしまうという失敗をすることがあります。
■徒長枝の処理
徒長枝のほとんどは下垂させ、
樹形づくりに用いることとしました。
枝を下垂させると、年毎に衰弱します。
そして、下垂させた枝の途中から徒長枝が発生します。
この徒長枝を下方に誘引して新しい主枝に仕立てるのです。
【注意】
この時期は木の水分が少なく、
無理な力をかけると折れやすい状態です。
そのため、本来下垂させたい位置よりも手前で止めました。
木に樹液が流れ出してから、本格的な“曲げ”を行う予定です。
まずは、鉢の周りに縛った麻ひもに、
下垂させるための麻ひもをひっかける
枝を下垂させるように、ひもを調節して縛る
■枝の選択
同じ方向に複数の枝が伸びている場合は、
素直に伸びている枝を残します。
不自然に曲がっているものは、
下垂させたときに曲がった部分から折れる危険があります。
また、上下に重なった枝の場合は上の枝を残します。
下の枝を残すと、下垂させたときに、
上の枝を切り取った部分から折れやすくなるためです。
上下に重なった枝は上の枝を残す(=下の枝をはずす)
上の枝を下垂させる
■仕立て完成
見事な傘仕立てが完成しました。
植え替えについて
容器栽培では、地上部(枝葉)と地下部(根)とのバランスが大切です。
特に果樹の場合は、
果実の落果防止の点からも留意したいところです。
多くの場合、剪定・整枝で地上部が少なくなったときは、
地下部も少なくしてやります(植え替え)。
手抜きのアイデア
冬季は落葉しているので風圧が少ないのですが、
春から秋、特に台風季は鉢(株)の倒伏にしばしば見舞われます。
そこで、一回り大きな鉢に少し用土を入れて
そこに植え替えをした鉢をそのまま納めます。
こうすると、倒伏防止だけでなく、
鉢底からの乾燥も防げますので、
水切れ防止にも役立ちます。
また、夏冬には鉢内の強い高温・低温からの保護にもなり、
きれいな大鉢を使えばお化粧ともなります。
一回り大きな鉢に入れる
取材後記
傘仕立てにすると木が大きくならず(徒長せず)、
コンパクトにしておくことができますね。
今はまだ“曲げ”が弱いですが、
樹液が流れ出したら本格的に“曲げ”を持たせるので、
もっとコンパクトになるはずです。
今回の仕立て方も家庭果樹ならではのユニークな手法です。
これからも植物の生態に精通した西先生ならではの
画期的な手法をお届けしていきますのでお楽しみに
『 スモモの傘仕立て 2012年2月 』に適した刃物
今回使用したのは高級剪定鋏ブイプロシリーズです。
毎日作業される方、プロの方にはお手入れがしやすくオススメです。
刃が傷んだときには替刃交換が可能です
高級剪定鋏ブイプロシリーズ
高級剪定鋏ブイセブンプロ