「桃栗三年、柿八年」というのは、桃や栗は種を蒔いてから三年で、柿は八年たつと開花結実する、ということだそうです。樹木は草花と違い、開花に時間が掛かるのと、種類によって開花までの年月が異なることをいっているのでしょう。
良い品種は接木で繁殖するのですが、その台木として種子から育てた実生苗木を使用します。本格的な品種改良をするのは実生苗木が基本的な方法です。
植物は発芽した環境に適応する、という性質があるので「わが家の果樹」を楽しむ愛好家や、家族のために果実の種を蒔いて楽しむ方もおられるようです。
種蒔きに際しては、果実が小鳥に食べられて地面に落ちる過程を思い浮かべるとよいでしょう。
まず、小鳥がお腹で果肉がすっかり取り除かれますが、これで果肉に含まれている、発芽抑制物質が除去されます。
さらに砂嚢で硬い果皮に傷が付けられ、種子が地面に落ちてから、吸水が容易になります。さらに鳥糞にまみれますが、これは格好の肥料（お土産）となってくれます。
つまり種子を乾燥させないこと、果肉を取り除いておくことがポイントなのです。
乾燥させると発芽力が損なわれるので、理想的には賞味したら直ぐに蒔いてやることです。もしも貯蔵する場合には、湿った川砂などに混ぜて冷蔵庫に入れておきます。
種子の衰弱が妨げ、低温処理ができ、発芽に良い影響を与えます。
では、実際に美味しくいただいたサクランボの種を蒔いてみましょう。
サクランボ
先ず、種子から果肉をきれいに取り除くため、ヌメリがなくなるまで、細かい川砂に混ぜてもんだり、振ったり、水洗いを繰り返します。(ペットボトルを使うと便利)
果肉取
用土は雑菌が少なく保水力のある、新しい細かい赤玉土などが適しています。
種蒔き
覆土は種子の厚みを目安とします。蒔き終わったら、品種や日時などをラベルに記入しておきましょう。
ラベル
最後に潅水は、ジョウロなどで上から掛けないで、鉢ごと水にゆっくり沈めて、腰水をしてやると用土全体にしっかり給水でき、用土が均一に落ち着きます。
腰水
果樹は多くのものは、違う品種の花粉でないと結実しにくい性質をもっています。
今日蒔き付けたサクランボ「佐藤錦」は、ナポレオンと黄玉という品質の交配によって誕生したそうです。佐藤錦とは、全く違った性質のサクランボの木になる訳ですが、そこがまた魅力でもあります。
ところがミカンの場合には、一つの種子から、複数の芽が伸びだしますが、その中には全く親と同じ性質を持った芽があり、それを育てるとまるで挿し木か接木をしたのと同じ株を得られることになり、自分の根を持つので丈夫な株となるはずです。
発芽した甘夏
種子から最初に生ずる根は「種子根」といって、非常に丈夫なものですから、大きく育てる場合は貴重ですし、小型にしたい場合には、種子根を途中で切断しておくと、徒長を防ぐことができます。
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