ブドウの剪定は今月の内に済ませておきましょう。
ブドウは春の本格的な樹液の流れが早いので、
遅れると切り口からの樹液の流出がひどいのです。
もしも忙しく、切った枝などの整理ができない場合でも、
写真のように剪定だけはしておきましょう。
さて、写真は、夏の強い西日よけに作ろうとしているブドウの「緑のカーテン」です。
しかし、手入れが十分できず枝の強弱に大きな差が出ています。
今年は、枝の生長を調整して、
そろって元気な枝にしてみようと思います。
● ● ● さあ、やってみよー! ● ● ● ● ● ●
枝の発生を制限する
昨年の失敗は、枝の発生を放任したことです。
そのため、貧弱な枝から発生した新梢は、
ますます貧弱な生長をしています。
それだけでなく、
伸ばしたい枝の通風採光を妨げることにもなっています。
そこで、まず貧弱(充実不足)な枝を整理します。
枝の選別
こうした変則的な仕立て方、
それも放任栽培に近い樹形になってしまったものでは、
枝の扱いは難しくなりますが、
ブドウにしてみれば、果樹園での栽培にみられる
「主枝」-「亜主枝」-「結果母枝」と整えてもらいたいところでしょう。
そこで、まず「主枝」となるしっかりした枝を選びます。
今回、西日よけに作る「緑のカーテン」のための主枝候補は
1本にしました。
下方では通風を確保したいのと、
景色を楽しみたいと考えたためです。
▼主枝を選ぶ前
▼主枝を選んだ後1
▼主枝を選んだ後2
結果母枝の処理
ブドウは、
昨年のよく充実した枝から伸びだした新梢の、基部に近い節に結果します。
この株の場合、まだ主枝~亜主枝の流れができていませんから、結果母枝の処理が中心となります。
方法は簡単で、昨年に伸びた枝の剪定となります。
基本的には、充実した枝は長く残して切り戻すことができますし、
弱い枝は3節以下に切り戻します。
枝の強弱の見分け方
●強い枝
太い・丸い形・節間が短い・芽が大きい・髄(※1)が小さい(木質部が多い)
●弱い枝
細い・楕円形・節間が長い・芽が小さい・髄(※1)が大きい
※1:髄(ずい)
枝の中心部に空間がある部分(中心部の茶色い部分)。
周囲の緑色の部分が木質部
▼太さと節間の違い
上:弱い枝=細く、節間が長い
下:強い枝=太く、節間が短い
一つ上の節で切る=犠牲芽剪定
ご承知のように、ブドウは切り口から枯れ込むことがよくあり、伸ばしたい先端の芽(発芽)が駄目になることがありますから、一つ上の節で切っておくのが安全です。
髄が見えると、そこから雑菌が入ったり、水が入ったりして、腐ってしまう可能性があるためです。
節は木質部でできているため、節の上で切ると髄が見えず、切り口からの枯れ込みを防ぐことができます。
▼節の上で剪定
▼節の上で剪定したときの切り口の様子
髄が見えず、木質部のみが見えている
▼枝の断面
髄は節と節の間にあることがわかる
枝の配置
樹木の生長は、上部(幹の先端部)への樹液供給が盛んであり、
下部ほど弱まることが多いものです。
そして、同じ位置から伸びた枝でも、
上に伸び上がっているものほど旺盛な生育をし、
ななめ上~横~下方と向かうにつれ元気がなくなります。
そうしたことを念頭において、今年の新梢のそろった生長を計り、
美しい「緑のカーテン」を作るためには、結果母枝の配置が重要になります。
方法は簡単で、充実している枝は下方に曲げるようにし、
弱い枝は上向きに誘引しておくことです。
このことは、今年の新梢の誘引でも同じです。
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編集後記
今回のブドウは2012年7月にもレポートしたブドウです。
今夏は通風の確保と景色を楽しむために、
思い切って主枝を1本にしています。
今夏の様子が楽しみです
2012年7月レポート「ブドウのカーテン」
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