果樹を庭に植える場合について、
自由に茂らせ手入れができる場合は、
盃状形や変則主幹形などに仕立てられることが多いようです。
非常に合理的ですし、生育面からも無理がありません。
ところが一文字仕立てとかY字形など、
変則な樹形の場合には、余程注意しないと樹形が乱れてしまいます。
特に容器栽培の場合には、下枝の枯れ上がりで、
とんでもない樹形になってしまいます。
今回は、容器栽培で失敗した株の仕立て直しを試みることにします。
● ● ● さあ、やってみよー! ● ● ● ● ● ●
切り込み
樹形に共通した性質ですが、
発芽する勢いは、先端部のものが一番旺盛で、
下方になるにつれ弱くなり、最下方のものでは発芽することもできません。
これは養水分が先端部へ多く送られることもありますが、
上部の芽から下方の芽に向かって、発芽抑制物質が送られているのだそうです。
下方の芽も伸びだしたいのに、発芽抑制物質の作用によって発芽できないというのです。
そこで肝心の発芽抑制物質が、
下方の芽に届かないようにするために、
発芽させたい芽の上に下の写真のように「切り込み」を入れてやります。
こんな感じにできました!
これだけの作業ですが、発芽できなかった下方の芽も自由になって伸びだすことができます。
環状剥皮
「切り込み」で不十分な場合には、 発芽させたい芽の上部に環状剥皮をしてやります。 下の写真は下枝が枯れ上がったモモの株を仕立て直すために、
環状剥皮をしたところ、下部の芽が伸びだしたものです。
これでコンパクトな樹形に仕立てることができます。
この例で分かるように、枝も幹も古くなると、
芽を確認できなくなります。
しかし「潜芽」といわれる芽の原基は残っています。
その原基のどれが発芽してくるかは分からないので、
もしも希望する位置からの発芽でない場合には、
早く摘み取って、次の発芽を期待するようにします。
環状剥皮された位置から上の部分の生育は、
当然のことながら阻害されます。
このことを利用して、主枝のバランスを計ることが考えられます。
下の写真は、容器栽培のスモモですが、
左右に伸びた主枝の勢いに大きな差があります。
これを放任しておくと、
強い方の主枝はますます元気になって、
弱い主枝は衰弱する一方です。
そこで元気な方の主枝に、環状剥皮をしておきます。
はさみで切り込みを入れて…
ナイフでぐるりと回します。
こんなかんじになりました!!!
誘引
写真はやっと開花結実が始まったスモモです。
枝が徒長していますが、開花しており収穫が期待されます。
そこで誘引をして収穫と仕立て直しを計ります。
誘引には3つの利点があります。
【1】樹に無理をさせないで済む!
剪定で枝を失うと、地上部と地下部のバランスが乱れてしまいますが、
誘引はその乱れを避けることが出来ます
【2】樹の若返り(徒長枝の発生)を促さない!!
そのため、花芽が着きやすくなります
【3】曲げられた枝の基部から徒長枝が発生する!!!
なので、コンパクトな樹形に仕立て直すことができます
※詳しい誘引については、前回記事『スモモの誘引』をご覧くださいね◎
https://www.ars-edge.co.jp/product/pro/2014/04/post_182.php
全て誘引し終わったスモモの木がこちら!
すっきりなりましたね!
以上で、今回の作業は終わりです◎
おつかれさまでした
『果樹の仕立て直し』に適した刃物
フローリストナイフ フローナ直刃
小さく小回りがきくので、環状剥皮や切れ込みを入れるのに便利!
西先生も愛用のナイフです