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西先生のプロの園芸作業 | アルスコーポレーション株式会社
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プロフィール

西 良祐(にし りょうすけ)

大阪府立園芸高等学校教諭、甲子園短期大学教授、常磐会学園大学教授を経て、(社)フラワーソサイエティー名誉会長を勤める。 その他NHKテレビ「趣味の園芸」講師や財団法人川西市緑化協会理事、社団法人日本家庭園芸普及協会技術顧問など。

鉢物の緊急植え替え


矮性のモモで「ボナンザ」という品種を鉢植えしておきました。

コンパクトな樹形ですから鉢植えでも結実が期待できますし、
あわよくば盆栽風に仕立てられるかも、との思いがあったのです。

ところが最近になって下の写真のように、
雑草とゼニゴケがはびこっているのに気づきました・・・


ゼニゴケは用土が通気・排水の悪い状態になると、
必ずといってよいほど現れます。

そしてボナンザの生育も芳しくありません。

このまま放置しておけば、日ごとに衰弱することでしょう

では、なぜこのような症状が現れているのでしょうか。

まず考えられるのは、
用土が過湿になっていることです。

その原因は用土の排水・通気の不良、
次は水分の過多です。

用土は赤玉土を用いており、
健全に育っているほかの鉢植えと同じですから
問題はないと思います。

次に考えられるのは、置き場所です。

というのも、この鉢は小鉢と一緒に置かれていました。

小鉢の場合、基本的に夏季は午前10時と午後3時に
2回水やりを行っています

ですから、この鉢にとって灌水過多の状態が
生じたのではないでしょうか。

もうひとつ考えられるのは、
排水の良い排水鉢ではなく、浅めの鉢であったことです。

ご承知のように、排水は深い鉢ほど良く、
浅くなるほど悪くなる傾向があります。

そこでこの状態から早く快適な環境へ移して(移植)
やることにしますが、その際に注意しなければならないのが時期です。

落葉樹の場合は、落葉している秋から春が安全とされていますが、
今年は台風一過でずいぶん涼しくなっていますので、
十分に注意をすればこの時期から行えると思います

それでは、本日の作業を行っていきましょう。

● ● ● ● ● ● ● さあ、やってみよ~!● ● ● ● ● ● ● ● ●

根の状態確認

まず、鉢から株を抜き出します。


側面を見てみると、雑草の白い根が見受けられますが、
底を覗きこむと、、、モモの白い根が見当たりません

植物は白い根から養分を得ますが、
現状のモモには見当たらないことから、
この株は絶食状態になっているといえます。

また、根と葉は相関関係があります。
根の先が弱っているということは、
葉っぱの先端も枯れているということ。

実際に鉢を見てみると、
葉が赤く枯れてしまっています。。。


これは大変
緊急に植え替えを行っていきます。

除草

はびこっているゼニゴケをピンセットで取り除きます。

用土の表面には雑草の種子などが落ちているので、
すっきりと掃除をしましょう



そしてこのまま雑草も処理していると、
表面にモモの根を発見しました!


やはり予想していたとおり、
鉢が灌水過多の状態であったため、
土の中に根を伸ばすことをためらい、
なんとか表面にて伸長させていたのでしょう。

全て除草し終わると、すっきりしました・・・

根の処理

モモを鉢から取り出し、根の処理をしていきます。

まず、周囲の根と土を外していくと、
ほろほろと崩れていってしまいます。

この株は、鉢に植えて約3年経つのですが
通常は3年すると根が土をしっかりと抱えているはずです。

しかしこの株は根が腐ってしまい、
うまく土を抱えることができていません。


根の状態をしっかりと確認するため、
水の中に入れて、土を落とします。


この時、手で根を触ってしまうと
粘土のように固まってしまう恐れがあるため、
古い土は払い落とすようにしてください。

根の切り戻し

根が腐ってしまっているため、
切り戻しを行います。


徒長している根は、元から切ってしまいます



切り戻すとこのようになりました。




切り戻した根は、乾燥させないよう
水につけておきましょう


このとき、予めバケツに
メネデール等の発根促進剤を加えておくと安心です。


用土の用意

特に問題のない用土の場合は、
容器の中の用土の種類(質)は統一させておきましょう。

用土の質量が異なっていると、
根は順調に生育できないからです。

今回は、通気排水が良く根詰まりしにくいことから
最近人気のある「スリット鉢」に植えることとします

スリット部分が隠れるまで
赤玉土の中粒を入れ、その上から小粒を入れこみました。


植え替え

できあがった土に植え替えていきます。

新しい鉢に植えた株の上から、更に赤玉土小粒を入れていきます。

表面にはピートモスを敷きます。
これから冷え込む季節になりますので、
根の保温の役目も担ってくれるでしょう。


葉の処理

上の部分で少し、
「根と葉は相関関係」があることに触れました。

今回、根を切り戻したことから
葉の面積も小さくしておきましょう。



全て処理すると、だいぶ軽くなりましたね。
これで根と葉のバランスがとれました。


最後に麻紐で鉢と株をしっかりと固定して、本日の作業は完了です。

植え替え後は、半日陰の場所に置いておきましょう。

すっきりとなったボナンザ。
これで元気を取り戻してくれますように。。。


『 鉢物の緊急植え替え 』に適した刃物
葉のカットでは、クラフトチョキを使いました◎
ソフトグリップで長時間の使用でも手が疲れにくい仕様です!

★★★今日のひとこと★★★

秋ですねえ。。。

朝、自転車を漕ぐときに、
きゅっと秋の涼しい風を感じては、
なぜかセンチメンタルな気分になる今日このごろ。
もうすぐ、木々も赤や黄色に
色づいていくのかと思うと、
そうだ、京都に紅葉を見に行きたくて
仕方ありません・・・

気温が少しずつ下がってきています。
みなさま風邪などひかれぬよう、
あたたかくしてお過ごしくださいね


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