わが国に自生するランで、デンドロビウムの一種(デンドロビウム属モリニフォルメ種)です。
江戸時代から長生蘭と呼ばれて、園芸品種も多数育成されています。本来は、岩や樹木に着生しているものですから、栽培する場合には根に新鮮な空気を供給してやることが肝心です。
そうしたことから、ヘゴ板にくっつけて20年くらい育ててきたのですが、最近急激に衰弱してきたので、元気回復をはかることにしました。
衰弱の原因は、基本的に乾燥が酷かったことと、当然養分不足があります。それに、壁に吊るしてあったのですが、新しい根をナメクジに齧られたことも痛手となっています。
そこで、通気軽水の良い素焼鉢に水苔で植え直してやることにしました。
要領ですが、先ず株が大きくなっていますので株分けをし、古い水苔などを根を傷めないように取り除きます。
水苔などは乾燥していると作業しにくいので、水を吸わせるのも一法でしょう。
株をあまり小さくすると弱るので、最低でも茎を3本以上で1株とします。
用土は、水苔が最適とされますが、古いものは根を傷めるので、新鮮なものを用います。
植え方ですが、写真のように湿った水苔を木炭に巻きつけ、セッコクを跨らせます。
木炭の代わりに、ヘゴ棒や軽石あるいは小鉢を入れて隙間を大きくすることも通気を良くするのに役立ち、根腐れの防止・生育促進に繋がります。
また、植付け位置も株元が鉢の縁より高くなるように、盛り上がるように植付けて、通気を良くします。
普通の植物では、植え替えた時にはたっぷりと潅水するのですが、着生ランの場合には、乾燥気味にしておく方が発根を促すようです。今回の株のように、衰弱のひどい株の場合などは、茎葉に軽く霧水を吹いてやるとよいでしょう。
植付け後の管理としては、新根が発生するまで、半日陰に置いて霧水を掛けるくらいが安全です。肥料は、水苔が新鮮な場合には特に与えない方が無難でしょう。
今回は新根が発生してから、薄い液体肥料を与える予定です。
植替え時期は繁殖の適期で、「矢伏せ」という方法がよく行われます。古くなった茎を切り取って、水苔の上に並べ、その上に水苔をかぶせておくと、節から新芽が伸び出して新しい株(高子)になります。
大きな株では、茎の上部の節から高子が生じていることがあります。これは茎を付けて切り取り、鉢上げをしてやります。
新しい株(高子)
また、果実が出来ている場合には、種子を取り出し、親株の周りに播いておくと、蘭菌の助けを借りて発芽してくれるかも知れません。
<株分け完了!>