【スマート農業×刃物】ミニトマトの自動収穫機に専用刃を提供
農林水産省が推進している「スマート農業」。農業用刃物のメーカーであるアルスも専用刃物の開発や提供で携わっています。今回、アルスの収穫用刃をミニトマトの自動収穫ロボットに採用いただいた株式会社アグリッドの大規模ハウスを訪問し、開発における苦労やなぜアルスの刃物を選んだのか、そしてこれからの農業について詳しくお話を伺いました。
《目次》
2.[農業]×[工業]で実現、株式会社アグリッドの大規模農業用ハウス
4.これからの農業
アルスと「スマート農業」
スマートフォン、スマート家電など、最近すっかり生活になじんでいる「スマート」がつくモノやシステム。近年農業においても「スマート化(※)」が進められ、実際の農業現場で活用されるようになっています。
※スマート化とは
情報システムや各種装置に高度な情報処理能力あるいは管理・制御能力を持たせること。英語のスマート(smart)は「賢い」「洗練された」という形容詞だが、最近は「コンピュータによる制御・処理能力を搭載した」という意味でも用いられる。
「スマート農業」とは?
農業における「スマート化」とは、以下のような例が挙げられます。
- ドローンや衛星情報を使って農作物を管理する
- 生産者の知識やノウハウをデータ化して活用する
- 植物工場による野菜などの計画生産
- 大規模ハウス栽培(施設園芸農業)
- 複雑かつ膨大な農作業のロボット化
日本の農業現場では担い手の減少や高齢化による労働力不足、生産ノウハウ断絶といった問題が深刻化しており、これを解決するものとして農林水産省は「スマート農業」を推進しているのです。
アルスと「スマート農業」の関わり
アルスにはもともと工場機械に取り付ける特殊な刃物をオーダーメイドで製作する「産業刃物」と呼ばれるチームがあり、自動車や半導体の製造工場をはじめ、医療、繊維、包装、スポーツなど多種多様な業界に刃物を提供してきました。
その中で最近少しずつ需要を増しているのが「スマート農業」の分野です。アルスは農園芸刃物と工業機械刃物の製造で培った技術力を活かし、植物工場で使用される収穫用刃物や、大規模ハウスで稼働する自動収穫ロボット用刃物の開発・提供などを行っています。
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今回は、三重県いなべ市の大規模ハウスを訪問し、アルスが収穫用刃を提供したミニトマトの自動収穫ロボットが実際に稼働する様子を取材しました。
※取材は2021年1月の緊急事態宣言以前に実施しました。
[農業]×[工業]で実現、株式会社アグリッドの大規模農業用ハウス
三重県いなべ市に建設された、株式会社アグリッド/AgriD の大規模農業用ハウス。国内最大級、4.2ヘクタールの広大なハウス内にはミニトマトが整然と並び、大規模な水耕栽培が行われています。
株式会社アグリッドは、国内トップクラスの施設栽培技術・品種開発技術を持つあさい農園(株式会社浅井農園)と、自動車部品メーカーとして広く知られるデンソー(株式会社デンソー)による合弁会社です。
農業と工業、双方の技術を活かして【大規模ハウスにおける次世代施設園芸モデルを構築し、普及拡大すること】【生産性の高い持続可能な次世代施設園芸モデルにより、世界の農業生産事業に貢献すること】を目的に、2018年設立されました。
株式会社デンソー
自動車技術、システム・製品を提供する、世界的な自動車部品メーカー。近年はあさい農園と立ち上げた「アグリッド」のほか、施設園芸先進国であるオランダのセルトングループと施設園芸ソリューションを提供する「株式会社デンソーアグリテックソリューションズ」を設立するなど、農業関連事業、特に「持続可能な農業」の実現に取り組んでいる。
あさい農園
『植物と一歩先の未来へ』を企業理念に掲げ、研究開発型の農業を実践。トマトをはじめとした野菜や植木の生産、農業事業開発、技術や運営指導などのコンサルティングを行う。
自動収穫ロボット「FARO(ファーロ)」
この大規模ハウスで活躍するのが、デンソーによって開発されたミニトマトの自動収穫ロボット「FARO(ファーロ)」。搭載されたAIが実の色づき具合や切るべき軸の位置を判断し、自動で収穫作業を行います。
このFAROの刃部に採用されているのが、アルスのハサミをベースに開発された専用刃。ステンレス製でサビにくく、果菜類の硬めの軸も切断できる収穫鋏を、FAROに取り付けられるよう加工しました。
実はこの刃が採用されるまでには紆余曲折があったそう。
「FAROの開発において苦労した点は2つ。1つは『見る』部分です。FAROが切るターゲットを定めるときに、”自分からどれくらいの距離にターゲットがあるか”を認識しなければなりません。そのため距離がわかるカメラを使う必要がありますが、条件が難しく苦労しました。そして、もう1つ大変だったのが『切る』部分です」そう語るのは、FARO開発チームのデンソー・西野さん。
「当初は刃も自社開発する予定でした。しかし、ハサミの調整は思った以上に大変で難航しました。そこで、『ハサミ屋さんを目指しているんじゃないのだから、ハサミはプロフェッショナルに頼もう』ということになりました」
そのハサミのプロとして白羽の矢が立ったのが、アルス。元々あさい農園のスタッフさんがトマトの収穫時に使用していたのがアルスの収穫鋏で、「よく切れる」と評価が高かったことが理由だそうです。
「ロボットが切っても人の手で切っているのと同じようによく切れています。(アルスの刃は)1枚ずつしっかり加工されていますよね。ハサミの切れ味が問題になったことはありません」
現在は収穫したミニトマトの房を落とさないよう、しっかりつかむ「はじ刃」を改良中とのこと。「FAROは実証実験の段階に入っており、夜間に無人のハウス内で稼働しています。人のいない時間に収穫作業が可能になることで、生産性の向上が期待できます」と西野さんは言います。
これからの農業
ミニトマト栽培において最も手間がかかるのは収穫作業だといいます。実が赤く色づいてからの短い収穫適期に一気に作業しなければ、おいしいミニトマトを提供することができません。短期間に労力のかかる作業だからこそ、まずは収穫作業から自動化を進めたそうです。
FAROのような自動収穫ロボットが開発され、現場に導入されれば、人はより「考える仕事」ができるようになると西野さんは考えています。今後は更なる開発を進め、「持続可能な農業」の実現に取り組んでいくそうです。
農業用刃物を製造するアルスも、農園芸刃物と工業機械刃物の製造で培った技術力を活かしながら、より生産者に寄り添って「スマート農業」の発展に貢献したい。アグリッドの広大な工場を見学しながら、その思いをより強くしました。
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