ベランダの特性を調べよう!(後半)|ベランダの方角とガーデニングのコツ
ベランダでできるキッチンガーデンを始めるための基礎の基礎を、はたさんとアルスケから教わった花坂ファミリー。今回は、より具体的なベランダ事情に当てはめて、”キッチンガーデン”を始める準備をします。
▼前回の記事「ガーデニング準備|ベランダの特性を調べよう!(前半)」
野菜・くだもの・エディブルフラワー(食べられるお花)・ハーブなどを彩りよく植えた、”見る”と“食べる”が楽しめるお庭のこと。この連載ではベランダで無理なくできるビギナー向けキッチンガーデンのアイディアをたくさん紹介していきます!
東西南北、それぞれのベランダに適したガーデニングを知ろう!
「さて、前回はベランダの特性を3つのポイントでお伝えしました。」
☞復習 ベランダ特性を調べよう!|ベランダ特性の3つのポイント
「日当たり、風通し、生活や防災上の必須条件ですね!」
「その通り! 今回はベランダの向き(東西南北)に注目して、ベランダ特性に合ったガーデニングを考えてみましょう。」
《目次》
5.今回のおさらいと次回の予告 ~花坂さんちのベランダ事情~
◎一日中、日当たりが良い南向きのベランダ
「まずは、南向きベランダのポイントです。」
「南向きのベランダは、1年を通して日当たりに困ることはありません。下の図を見てください。」
南向きベランダの日当たり条件
「確かに、夏も冬も光が当たってる!」
「はい。 図からわかるように、季節によって日の射し込み方が異なるものの、南向きのベランダは日中ずっと光があるので、様々な植物を育てるのに適しています。」
「うちのベランダは南向きだから、日当たりに関してはバッチリですね!」
「ええ、基本的にはバッチリです。でも、日当たりが良すぎるがゆえに、気を付けなければいけないことが……」
◎南向きベランダの注意点と対策
注意点:夏場の温度上昇に注意!!
日当たりのよい南向きのベランダは、夏、とても暑くなります。植物にとっても暑さは辛いもの。あまりに暑いと、ひどい場合はカラカラになってしまいます。
人間が汗をかくのと同じように、植物も体が熱くなりすぎないよう体内の水分を水蒸気として出し(=蒸散)、気化熱を利用して体を冷やします。
蒸散し続けると水分を失ってしまうので、根からどんどん土中の水を吸い上げます。そのため、夏は早く土が乾いてしまうのです。
対策:植物を夏の暑さから守る対策は?
植物を暑さから守るには、しっかり水をあげ、風通しをよくすることが大切です。水が不足しないよう、土にたっぷりと水を吸わせ、植物にいきわたらせましょう。
また、人間が汗をかいているとき風に当たると涼しく感じるように、植物も蒸散しているときに風に当たると体を冷やすことができます。
「水やり」と「風通し」に注意し、植物がカラカラになるのを防ぎましょう!
☞具体的な「風通し」対策は前回の記事で
◎ 東向きのベランダは、朝の日差しを大切に
「続いては、東向きベランダのポイントです。」
「東向きのベランダ、朝は日当たりが良さそうですね」
「その通り! と言いたいところなのですが、実はちょっと注意が必要です。」
◎東向きベランダの注意点と対策
注意点:壁のタイプで異なる、光の入り方
太陽は東から昇り、正午を境に西に沈んでいきます。では東向きベランダの朝は日当たり抜群! ……と思いきや、ベランダ壁の条件によってかなり日の当たり方が異なります。
◎格子状・強化ガラス壁(日を遮らないタイプ)
格子状・強化ガラス壁の場合は、光を遮るものがない(または少ない)ので、太陽の低い早朝から光が差し込みやすいです。
◎コンクリート壁(日を遮るタイプ)
一方、コンクリート壁の場合は太陽の低い時間帯は光が遮られ、太陽が壁の高さを越えるまで日が射し込みません。
「本当だ、だいぶ差がありますね。」
「そう、壁の影になって案外光が当たっていない、ということがあるんです。」
対策:光の当たる場所を把握して、植物を置こう!
「ですから、ベランダのどのあたりによく光が当たっているかを観察して、植物を置くようにしましょう。」
「季節によっても日の射し込み方が異なります。季節ごとに、“日当たり観察日”を作るのもよいですよ。」
「限られた日の光を、しっかり活用しましょう!」
◎“西日”でも植物はOK! 西向きのベランダ
「次は、西向きのベランダです。」
「西向きって、あんまり日当たりがいいイメージ、ないなあ…」
「“西日”や“夕日”の印象が強いからかもしれません。ですが、西向きのベランダは、午後から夕方にかけて日が射すので、実際の光の量は東向きと変わらないんです。」
「そうか。確かに、夕方の西日はまぶしいくらい射し込みますね」
「ただ、西向きならではの注意点もあります。早速見ていきましょう!」
◎西向きベランダの注意点と対策
注意点:午後から昇り切った日が射し込む
西向きのベランダは午後から日が入ります。「一日の半分、光が当たる」という点では東向きと同じなのですが、“午後から”なのが注意点です。
図のように、西向きのベランダには太陽が昇り切った状態で光が射し込むのです。特に、夏場はいきなりカンカン照りになります。
「夏の西向きベランダは、午前中は日が射さないけれど非常に暑い状態です。植物は自身の熱を下げるため、どんどん土中の水を吸い上げて蒸散(=水分を発散)させます。」
「そのうえ、午後になると夏の陽射しが最も強い状態で当たり始めるのです。植物は光を浴びれば光合成を始めます。つまり、西向きのベランダの植物は、朝から日が沈むまでずっと働き続けていることになります。」
▼こんな状態です
「めっちゃかわいそうや…」
「そうだよね。だから、西向きのベランダで植物を育てるときは、夏の夕方に“水切れ”を起こさないよう、注意してあげましょう。」
対策:夏の西向きベランダは、夕方にも水やりを!
「朝にたっぷり、夕方にももう一度。夏は、たくさんお水をあげてくださいね。」
◎北向きのベランダは、独特の楽しみ方
「最後は、北向きのベランダです。」
「日が当たるイメージ、全然ないんですが…」
「はい、そうなんです。もう一度この図を見てください。」
■ベランダの向きと太陽の位置関係
「北向きのベランダには、ほとんど日があたっていません。」
「じゃあ、北向きのベランダの人は、ガーデニングできないんや…」
「いえいえ、あきらめないでください。北向きベランダは、北向きならではのガーデニングが出来るんです。」
◎北向きベランダの注意点と対策
注意点:北向きベランダは、植物選びをしっかりと!
「日の光が当たりにくい北向きベランダですが、育ちやすい植物を選ぶことで、かえって独創的なガーデニングを楽しむことが出来ます。キッチンガーデンも、できますよ。」
対策:北向きでよく育つ植物を選ぼう! ~具体例~
北向きのベランダは、一日中ほとんど日が当たりませんが、適切な植物を選べばキッチンガーデンを楽しむことができます。 具体例を見てみましょう。
◎北向きベランダのキッチンガーデンに向いている植物
~野菜~
薬味として大活躍するミツバやミョウガは、暑さと乾燥が苦手。北向きのベランダは、育てやすい環境です。
~花~
インパチェンス(別名:アフリカホウセンカ)は半日陰でもよく育つ植物。こちらも北向きベランダにおススメです。
~グリーン・ハーブ類~
お茶で有名なドクダミは、よく見ると可愛らしい花を咲かせます。葉を収穫して乾燥させればドクダミ茶にも。また、お寿司の“バラン”の語源になったハランは、美しいグリーンを楽しめます。いずれも日陰を好む植物です。
~コケ・シダ類~
最近はコケテラリウムがブームになっていることもあり、コケは大注目です! 苔庭にトライできるのも、北向きベランダならではですね。
「こうやって聞いていると、おもしろそうな植物がいっぱい!」
「そうでしょう! 適した植物さえ選べば、ガーデニングをあきらめる必要はないんです。」
今回のおさらいと次回の予告 ~花坂家のベランダは?~
「さて、今回は、東西南北それぞれのベランダに適したガーデニングについて、お話してきました。ここで、花坂さんのベランダを見てみましょう。」
▽花坂家のベランダ
「我が家のベランダは…
・南向き ☞ 日当たり良好だが、夏の暑さ・水切れに注意!
・強化ガラス&コンクリ壁 ☞ 風通しはあまり…なので、風通し対策を!
・洗濯スペース、室外機 ☞ 向かって左側に集中。生活導線を考えた植物配置を!
で、合っていますか?」
「はい、ばっちりです。これでいよいよ、キッチンガーデンのガーデニング計画を立てられますね!」
「おお~~~~~!!!」
「植物や道具の準備のためにガーデニング計画は大切ですが、どんな植物を育てようとか、収穫したらこんなものが作りたいとか、ガーデニング計画を立てておくと、夢が膨らみますね。 」
「図鑑で見たやつ、たくさん育てたい…!」
「バジルペーストやイタリアンパセリをのせた手づくりピザ…!」
「お花でレジンアクセサリー…!」
「(夢、ふくらんでますね。)」
▶次回【5月からのガーデニング|ビギナーさんにオススメの野菜、管理できる鉢やプランターの数】につづく
◎はたさん(畑明宏さん)
花坂さん一家の暮らす街で園芸店を開くガーデニング研究家。お花や果樹の育て方やDIYについて、ご家庭の条件にぴったりのアドバイスをくれる。人呼んで‶家庭園芸のプロ″。自宅では400坪の土地を使ってお米や野菜を作り自給自足生活をしている。収穫したもち米で餅つき大会をするのが毎年の恒例。アルスとはたさんについてはこちら
◎アルスケ(アルスのマスコットキャラクター)
折れず、曲がらず、硬くて靭性(じんせい)のある鋼を目指して、日々焼き入れ炉を見つめるうちに赤色に染まってしまった真っ赤なワニ。大阪堺のアルスコーポレーション生まれ、趣味は茶の湯とガーデニング。現在堺の実家を出て、はたさんの園芸店で修業中。ガーデニングの困りごとには反応せずにいられない。 さらに詳しくはこちら
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第2話はいかがだったでしょうか? スタッフははたさんにこのお話を伺ってから、会社の植物の日当たり条件が気になるようになりました。
▽アルスにはたくさんお花が咲いています
皆さまも、ぜひ身の回りの植物の日当たりや風通しを、観察してみてください!
\ はたさんとアルスケのチョキチョキライフ /
大阪堺の刃物メーカー・アルスコーポレーションのマスコット、赤いワニの「アルスケ」と、ガーデニング研究家のはたさん(畑明宏さん)がお届けする『はたさんとアルスケのチョキチョキライフ』。2020年はとある住宅街のマンションに暮らす「花坂さん一家」がアルスケとはたさんとの出会いをきっかけに、ベランダで“キッチンガーデン”に取り組む様子を描きます。
📢 公式Twitter & アルスケinstagram更新中!
最後に、ガーデニングにおすすめのアルス刃物のご紹介します。
◎ガーデニングにおススメ|Gクラシックシリーズ
上品な深いグリーンの持ち手で統一された、ガーデニング向け《Gクラシック》シリーズ。ご家庭での園芸作業に便利な刃物が揃っています。お求めは全国のホームセンター・金物店・園芸用品店や各インターネットショップで。
▼アルス商品はこちらからもお求めいただけます
それでは、次回をお楽しみに!