庭木のお手入れ(剪定)方法【年1回の剪定でOK!】
ご自宅に植わっている庭木。立派に育つのは嬉しいものですが、大きくなり過ぎたり敷地外に枝が伸びては困ってしまいますね。
そこで今回は、一般家庭で無理なくできるお手入れ方法を樹木医・畑明宏(はたあきひろ)さんに詳しく伺いました。「庭木が育ちすぎたので樹高を下げたい…」「花木剪定での注意事項は?」など、よくある質問をまとめたQ&A形式です。
《目次》
2.庭木の剪定時期
今回は、庭木のお手入れ(剪定)方法についてお届けします!
私の実家に庭木が何本か植わってるんやけど、両親も高齢になってきたからお手入れが大変で…。
帰省した時に手伝っているんですが、正しいやり方が分からなくていつも悩むんです…。
わかりました。一般家庭で無理なくできる庭木のお手入れ方法をお教えしましょう!
庭木のお手入れ(剪定)とは?
🌳「庭木のお手入れ」は何をするの?
「庭木のお手入れ」とは、基本的に剪定作業を指します。剪定(せんてい)とは庭木を切って形を整えたり風通しをよくする作業のこと。見た目をキレイにするだけでなく、枝を切ることで養分の巡りをよくしたり病虫害の発生を防ぐ効果があります。
🌳剪定以外に必要な作業は?
庭木のお手入れや管理方法を調べると、専門用語が多くさまざまな作業が必要そうな印象を受けます。しかし、一般家庭でプロのような完璧な管理をする必要はありません。落葉樹は冬に1回、常緑樹は5下旬~6月に1回の剪定作業だけで充分です。
落葉樹とは「ある季節になると葉を枯らして落とす植物」のことで、サクラやアジサイ、モミジやイチョウが有名です。
常緑樹とは「幹や枝に一年を通じて緑の葉がついている植物」のことで、代表的なものだと、オリーブや椿、キンモクセイなどが挙げられますよ。
🍊果樹(実のなる木)の場合は?
果樹の場合も、お手入れは年1回の剪定と実の収穫だけでOKです。もし「お店で買うようなキレイで美味しい実をたくさん収穫したい!」と望むなら必要な作業はたくさんありますが、自宅で消費するだけであれば実りは自然に任せてしまいましょう。
実った分もすべて収穫する必要はありません。木は生き物なので、身の丈に合わない量の実がついた場合は自力で落としてくれます。食べる分だけを収穫しましょう。もし実が敷地外に落ちそうな時は収穫してください。
🌳剪定しないとどうなるの?
もし全くお手入れをしないと、庭木の背がどんどん高くなって自力での剪定は難しくなります。専門業者に依頼するにも高木の剪定は「高所作業」になり、依頼料も高額になってしまいます。
また、剪定しないで放っておくと庭木の枝葉や実が敷地外に落ちてしまうかもしれません。落ちた枝葉が隣近所の敷地に入ると、ご近所トラブルの原因になりかねないので要注意です。
特に、植えてから数年経っている庭木は成長が旺盛です。少なくとも年1回は成長した枝葉を剪定しましょう!
庭木の剪定時期
🌳落葉樹の場合(梅・柿・ブドウなど落葉性果樹含む)
落葉樹は12~2月、庭木が休眠している落葉期間中に剪定しましょう。この時期なら太めの枝を切断したり多くの枝や芽を切り落とす「強剪定」をしても木に負担がかかりにくいので安心です。
気温の高い時期に剪定すると、枝葉が少なくなり蒸散量が減ります(人間でいうと汗がかけない状態)。熱中症のようになり幹焼けなどで庭木が弱るので、夏場の剪定は避けるようにしましょう!
🌲常緑樹の場合(ビワ・レモンなど常緑性果樹含む)
常緑樹は5月下旬~6月、新芽が出て新葉が落ち着いた時期に剪定します。落葉樹同様、気温の高い夏場(7〜9月中旬まで)の剪定は避けてください。
もし年2回剪定できる場合は、9~10月にもう一度、夏に伸びた分を軽めに剪定してください!
💡どうして落葉樹と常緑樹で剪定時期がちがうの?
落葉樹は冬、常緑樹は梅雨前に剪定作業を行います。落葉樹の剪定が冬なのは、葉が落ちて樹形が見やすく、休眠期で切り口から病原菌(腐朽菌)が入りにくいから。
一方、常緑樹の剪定適期は5月下旬~6月の梅雨前。常緑樹は毎年5月頃、新芽を出して2~3年前の古い葉を落とす「葉の入れ替え」を行います。この入れ替えが5月下旬頃までに終わるので、5月下旬~6月の梅雨前に剪定するのが常緑樹にとっては良いのです。
そういえば、5月は通学路に葉っぱがたくさん落ちてる!
【Q&A】庭木の剪定作業によくある質問と回答
それでは早速、
Q&Aを見ていきましょう!
Q1:剪定作業時の注意事項は?
Q:剪定作業時の注意事項は?
作業時は動きやすい服装で行うようにしましょう。手には作業用手袋をつけるのがおすすめです。脚立に乗って作業する場合は安全に特に注意してください。脚立を置く場所が安定しているか充分確認し、万が一の場合に備えてヘルメットで頭部を保護するようにしてください。
高枝切りハサミを使用する際は、枝が落ちる場所に人がいないかを確認してください。感電の恐れがあるので電線の近くでは使用しないようにしましょう。暑い時期であれば熱中症対策も必要です。また、ひっかき傷などを作らないよう長袖を着ることをおすすめします。
Q:庭木を剪定する時に必要な道具を教えてください。
剪定作業に必要な道具は枝を切るための剪定バサミ、剪定ノコギリ、高枝切りハサミといったものに加え、作業用手袋、ほうき、大きめのチリ取り、ブルーシート(100円均一などで売られているレジャーシートも便利です)、ゴミ入れなどがあります。また、高めの枝を切る際に脚立を使う場合は、頭部を護るヘルメットを被りましょう。
Q:庭の木が高くなりすぎて困っています。樹高の下げ方を教えてください。
高くなりすぎた庭木を剪定して樹高を下げたいのですね。
樹高を下げる場合は思い切って太い枝も剪定して構いません。しかし、枝を切る位置は注意してください。もし誤った位置で剪定すると却って切り口からたくさんの枝が発生してしまいます。
イラストのような場合、〇の位置で剪定しましょう。〇の位置でカットすれば、左に伸びている枝に栄養が集中するので無駄な枝が伸びてきません。
一方、✖の位置で切ってしまうと栄養が分散して切り口からたくさんの枝が伸びてしまいます。
いきなり〇の位置で切るのが難しい場合は、一度✖の位置でカットした後に〇の位置にノコギリや剪定鋏を入れると切りやすいです。
樹高を下げる剪定は「伸びてもいい枝」を探してその真上でカットする、と覚えましょう!
▼さらに詳しくはこちらの記事で!
Q:地際からたくさんの枝が出てきます。切った方が良いですか?
地際から出る枝を「ひこばえ」と言います。「ひこばえ」が出ている場合は、庭木がなんらかの理由で弱っている可能性があります。見苦しくない程度に残すのが庭木にとっては良いですが、切る場合は一度に全てを切り落とさず、肥料や水やりなどをしながら樹勢を回復させつつ、時間を掛けて徐々に剪定することが理想です。太枝切ハサミ「ロッパー」を使うと女性やご高齢の方でも簡単に剪定できます。
▼詳しくはこちらの記事で
Q:花木の剪定で注意することを教えてください。
切り方については普通の庭木と同じです。注意が必要なポイントを挙げるとすれば、剪定時期です。「花をたくさん咲かせたい!」という場合は花が散ってから1~2か月の間に済ませるのが良いとされています。一方、単純に樹形が整えばよい場合は常緑樹・落葉樹のタイミングと同じでOKです。
🌸花をたくさん咲かせたい場合
花木の種類によって異なりますが、多くの花木は花が散った2~3か月後には来年の花芽を付け始めます。もし樹全体に花を咲かせたい場合は、来年の花芽がつく前、今年の花が散ってから1~2か月の間に剪定を済ませるのが良いでしょう。ただし花木の種類によってかなり違いがありますので、詳しく知りたい場合はその花木の専門書を読むことをおすすめします。
🌳樹形が整えばよい場合
単純に樹形を整えたい場合は落葉樹は冬、常緑樹は5月下旬~6月に剪定すれば問題ありませんが、基本的に花芽は枝先につくので、剪定すると既についている来年の花芽ごと切り落とすことになってしまいます。残す枝、残さない枝を意識して剪定しましょう。
すべての花木に共通するのは7〜9月中旬の気温の高い時期の剪定を避けること。木が弱ってしまいます!
Q:自然樹形を保ったまま剪定する方法を教えてください。
庭木の樹種に関係なく、枝と枝が分かれる部分で剪定すると自然樹形を維持しやすくなります。剪定した部分の枝が残っているようなら、再度切り直します。
Q:剪定作業が終わったあと、庭がゴミだらけになってしまいました。ゴミが散らばらない良い方法はありませんか?
剪定作業をする前にブルーシートやレジャーシートを敷いておくと掃除がカンタンです。特に庭木の下が砂利敷きになっていたり寄せ植えがあったりする場合、落ちた枝葉を取り除くのは大変です。あらかじめシートを敷いておけばサッと掃除できますよ。
Q:剪定の際、隣の家に枝が落ちてしまいそうです。どうしたらいいでしょうか。
もし枝が隣家に落ちてしまいそうな場合は、枝先をヒモで幹の方と結んでおくと、自宅側に落とすことができます。ヒモは古新聞をまとめるようなものでOK。またツカミのついた高枝切りハサミなら枝を切り落とさず手元まで引き寄せて落とすことができるのでオススメです。
Q:高齢のため庭木の剪定が大変です。何か良い方法はありませんか?
作業が楽になる、軽い剪定道具を使うことがポイントです。特に上を向けて使う高枝切りハサミは少しでも軽いものをおすすめします。また、剪定鋏は、自分に合った大きさのハサミを選ぶのが重要です。手のサイズに合わない剪定鋏を使うと負担がかかり、場合によっては腱鞘炎になってしまうこともあります。
▼剪定鋏の詳しい選び方はこちら記事で!
樹木医・はたさんのオススメ剪定道具
剪定作業に必要な道具と使い方、オススメの商品をお教えします!
✂おすすめの剪定鋏
剪定に必ず必要なものは剪定バサミです。剪定バサミは手のサイズに合ったものを選ぶのが大切。販売店で売られているものはMサイズ(全長200㎜くらい)の商品が多いので注意してください。女性や手のあまり大きくない人は全長180㎜くらいの剪定バサミを選ぶとよいでしょう。
手に合わせて3つのサイズから選べる替刃式剪定鋏ブイエスシリーズ、グリップが回転し剪定作業をスムーズにしてくれるロータリータイプ(VS-R)といった剪定ばさみがおすすめです。
✋剪定鋏のサイズ対応表
手のサイズ | アルスの 剪定鋏のサイズ |
---|---|
(手長16.9㎝以下) |
|
(手長17~18㎝程) |
(7インチ/アルスS表記) |
(手長18~19㎝程) |
(8インチ/アルスM表記) |
(手長19㎝以上) |
(9インチ/アルスL表記) |
※上記の表はあくまで目安であり、扱いやすさを保証するものではありません。
手のサイズ(手長)は「手首についている一番上の横のシワから中指の先までの長さ」を測ってみてください。
日本人の手長サイズ平均は男性=183.4㎜、女性=169.3㎜。アルスの剪定鋏をお使いの場合、男性はMサイズ、女性はSサイズを選ぶ方が多いです。
データ引用:河内まき子、2012:AIST日本人の手の寸法データより
■ブイエスシリーズ
果樹農家さん、造園屋さんなどプロの現場で使われている、ブイエスシリーズ。切れ味・耐久性ともに現場での酷使に耐えるプロ仕様の剪定ばさみです。簡単安全ストッパーを採用なので片手でスムーズに開閉することができ、効率的に剪定作業を行えます。
手の大きさにあわせてS(VS-7Z)、M(VS-8Z)、L(VS-9Z)の3つのサイズから選べます。また、経済的な替刃式を採用しているので、長く使用できるのも魅力です。
私の手ならSサイズが丁度良さそうやな~。
サイズが選べる剪定鋏、助かるわあ。
■ブイエスシリーズ ロータリータイプ
切れ味・耐久性に優れるブイエスシリーズのロータリータイプは、日本ではあまり見かけることがない、握り込むと回転する回転式グリップです。 手の動き、指の動きに連動してグリップが回転するため、手への負担が少なく、長時間の作業でも疲れにくい仕様になっています。国内では作業量の多い果樹農家さんがよく使用しています。
なるほど、回転するグリップが手の動きをサポートしてくれるんだ。これは良さそう!
✂おすすめの剪定ノコギリ
次に剪定ノコギリです。ノコギリ選びで迷ったらアルスの工作園芸鋸P-18(P-18)をおすすめします。切れ味抜群、折りたたみ式で収納しやすく、DIYに使用することもできます。P-18より少しコンパクトな折込剪定鋸デラックス210(210DX)は女性や手の小さめな方におすすめです。
■工作園芸鋸P-18(P-18)
替刃式折込鋸の定番です。 手元にゴムがまかれているため滑りにくく、折込式なので持ち運びや保管の際も安全。生木の切断に加え、工作用として角材のカットにも使用できる兼用タイプです。
工作にも園芸にも使えるなんて便利だな。
キャンプの時にも持っていこう!
■折込剪定鋸デラックス210(210DX)
小型かつ軽量で扱いやすい折込剪定ノコギリです。折込式なので安全に持ち運べ、保管できます。生木剪定用の刃で、簡単キレイに切断できます。
こっちは小さくて持ちやすそう!
折込式なのも安心感があるなあ。
✂おすすめの高枝切りハサミ
続いて必要なのは高枝切りハサミ。よくテレビショッピングなどで見かける先に刃物がついた長く伸びる枝切りハサミのことで、切り落とすだけの「剪定タイプ」、果物や枝葉をつかめる「採収タイプ」、また刈込鋏のように細めの若い枝をまとめてカットする「刈込タイプ」、軽さに特化した「超軽量タイプ」などがあります。また、種類によってはパイプ部にノコギリを取り付けられるので、太めの枝をカットしたい場合にも便利です。
■軽量伸縮式高枝鋏ズームチョキエコノ
ズームチョキエコノは伸縮するタイプで1.8~3.0mまで3段階の長さで使用できます。高枝鋏に慣れない人にも使いやすい設計になっており、ノコギリもセットになっているのでパイプに取り付ければ太めの枝もカットOK。重さは1.3kgとやや重ためですが、その分耐久性に優れています。
採収タイプ(160ZD-3.0-3D) 切断目安:生木12㎜(ツカミ取り外し時)
刈込タイプ(190ZD-3.1-3D) 切断目安:生木直径9㎜(ツカミ取り外し時)
枝や実を落とさずキャッチするための「ツカミ」を使うときはツカミが対象物側を向いていなければいけないのですが、この高枝はパイプがD型になっていてツカミの向きがわかりやすいんです!
✂おすすめの軽量&小型の剪定道具
庭木の剪定作業は手や肩に負担がかかります。無理なく作業ができるよう、軽いものや手に合ったサイズのハサミを使いましょう。
■超軽量プロ用高枝鋏カーボンチョキシリーズ
ハードな作業をする果樹農家さんの要望に応えて開発されたカーボン製の高枝鋏。非常に軽く、1.2mの剪定タイプ(180PCC-1.2D)はなんと360gです。枝がつかめる「採収タイプ」と切り落としのみの「剪定タイプ」にそれぞれ1.2mと1.8mがあります。片手で扱えるので、あまり高くない木なら1.2mタイプでも充分間に合います。※伸縮機能なし、ノコギリは取り付けできません。
この高枝鋏は画期的な軽さです! 長めの1.8mでも剪定タイプは420g、採収タイプは435g。片手でひょいっと使えるくらい軽いので、伸縮しないタイプでもかなり上まで届きますよ!
500ml入りのペットボトルより軽い!
これならうちの両親でも使えるわ!
■約50%握力軽減! 剪定鋏ミニエース(133DX-W)
ちょっと変わった刃のかたちをしているミニエースは、切刃と受刃が包丁とまな板のような関係になっているアンビル設計の剪定バサミ。約50%握力軽減(アルス製品比較)のユニバーサルデザインです。ご高齢の方や女性の方など、握力の弱い人でもスムーズに切断できます。切断目安は生木直径15㎜まで。全長184㎜、重さは160gです。
おじいちゃんとおばあちゃんは重たいもの持つの大変やから、軽くていいハサミ、教えてあげたいなあ。
今回のおさらいと次回の予告
今回は、庭木の剪定についてお送りしました。
おかげさまで無事に庭木のお手入れができそうです!
庭木の剪定は年に1回で大丈夫。安全に配慮して、ぜひご自身でやってみてくださいね。
次回はより具体的な植物を例にあげて、庭木剪定についてをお届けします。お楽しみに!
あけましておめでとうございます! 今年最初の記事です。
2021年も家庭菜園や庭木、家庭果樹の情報をはたさんと一緒にお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!
\ アルスケ今年も頑張ります! /
Instagramにてアルスケのキッチンガーデンの様子をお届け中です。ぜひご覧ください。
それでは、次回をお楽しみに!
📢 公式Twitter & アルスケinstagramでキッチンガーデンの様子を更新中!
◎ガーデニングにおススメ|Gクラシックシリーズ
上品な深いグリーンの持ち手で統一された、ガーデニング向け《Gクラシック》シリーズ。ご家庭での園芸作業に便利な刃物が揃っています。お求めは全国のホームセンター・金物店・園芸用品店や各インターネットショップで。
▼アルス商品はこちらからもお求めいただけます
\ はたさんとアルスケのチョキチョキライフ /
大阪堺の刃物メーカー・アルスコーポレーションのマスコット、赤いワニの「アルスケ」と、ガーデニング研究家のはたさん(畑明宏さん)がお届けする『はたさんとアルスケのチョキチョキライフ』。2020年はとある住宅街のマンションに暮らす「花坂さん一家」がアルスケとはたさんとの出会いをきっかけに、ベランダで“キッチンガーデン”に取り組む様子を描きます。